【行政書士が解説】育成就労制度と特定技能のQ&A

目次

~令和9年育成就労制度施行に向けた実務の対応と制度設計~

 2024年に成立した改正入管法等により、外国人雇用の枠組みは劇的な転換期を迎えています。本コラムでは、実務に携わる行政書士の視点から、新制度「育成就労」の核心部分と特定技能との接続、さらには転籍ルールの詳細までを、一問一答形式で深く掘り下げます。

1. 【制度の理念とマイルストーン】

Q1:育成就労制度の最大の「法的性質」の変化は何ですか?

A: 従来の技能実習制度が「国際貢献(技術移転)」という建前であったのに対し、育成就労制度は「人材育成」と「人材確保」を法律上の目的として明記しました。これにより、外国人を「実習生」ではなく「労働力」として正面から受け入れ、3年間で特定技能1号水準(即戦力)まで引き上げる連続性のあるキャリアパスが法的に担保された点が最大の変化です。

Q2:令和9年4月の施行に向けた、企業の準備スケジュールは?

A: 施行日は令和9年4月1日ですが、実務はそれ以前に動き出します。令和7年9月に主務省令が公布されており、令和8年度中には「監理支援機関」の許可申請および「育成就労計画」の事前申請が開始されます。企業は、現在の監理団体が支援機関への移行準備を進めているか、また自社が「優良」認定の要件を満たせるかを、令和8年初頭までに精査する必要があります。


2. 【育成就労の実務的骨子】

Q3:育成就労において「必須業務」と「関連業務」はどう区分されますか?

A: 育成就労計画では「主たる技能」を定め、それを習得するための「必須業務」に就労時間の3分の1以上を充てることが義務付けられます。関連業務については、同一業務区分の範囲内であれば認められますが、技能実習時代に散見された「単純作業の繰り返し」や「専門外の雑務」は、計画認定の段階で厳しく審査されます。

Q4:農業や漁業で認められる「派遣形態」の具体的なルールは?

A: 季節性による繁閑の差が激しい分野に限り、派遣形態が認められます。ただし、派遣元(監理支援機関等)と派遣先の両者が共同で育成就労計画を作成し、認定を受ける必要があります。また、派遣先ごとに派遣時期を事前に特定する必要があり、場当たり的な人員配置は認められません。

Q5:一時帰国が認められる「通算期間」の計算方法は?

A: 原則として、日本での実就労期間が合計3年になる必要があります。季節性業務において、閑散期に最大6ヶ月の一時帰国を行う場合、その帰国期間は「在留期間」には含まれますが「育成就労の3年」にはカウントされません。そのため、計画自体が「帰国期間を除いて合計3年」となるよう設計される点に注意が必要です。


3. 【受入れ体制と監理支援】

Q6:監理支援機関の許可基準が厳格化された背景と具体策は?

A: 技能実習における「監理不全」を払拭するため、外部監査人の設置が「必須」となりました。さらに行政書士や社会保険労務士などの有資格者、または養成講習修了者の配置が義務付けられます。また、財務基盤(債務超過でないこと)や、1名の職員が担当する外国人数の上限(40名以下)など、質的・量的なガバナンスが強く求められます。

Q7:受入れ企業の「優良認定」を受けるメリットと条件は?

A: 優良な育成就労実施者(企業)として認定されると、受入れ人数枠が基本枠の最大3倍まで拡大されます。認定には、過去の失踪者数、技能検定の合格率、日本語能力の向上実績、地域社会との共生に向けた取組(自治体行事への参加等)が総合的にスコアリングされます。


4. 【権利保護と「転籍」の新ルール】

Q8:「本人意向の転籍」を認めるための、企業側の防衛策・対応策は?

A: 新制度では、同一業務区分内で、1~2年の転籍制限期間(分野により決定)を経過し、技能・日本語要件(A1合格等)を満たせば転籍が可能になります。企業側としては、安易な離職を防ぐため、転籍制限期間を法定上限の2年に設定する、あるいは「待遇向上措置」を講じることで定着を図る戦略が重要となります。

Q9:転籍時に発生する「費用補填(按分)」の法的ロジックは?

A: 転籍元が支払った初期費用(入国渡航費、紹介料等)について、転籍先企業が残存期間に応じて支払う仕組みです。これは、特定の企業に初期コストの負担が偏ることを防ぎ、公正な競争環境を維持するための経済的調整措置です。具体的な按分率は今後告示で定められます。


5. 【日本語能力と教育義務】

Q10:日本語講習の「労働時間性」に関する見解は?

A: 政府答弁では、日本語講習時間は「労働時間として扱うことを義務付けない」とされています。しかし、企業の職務命令として強制参加させる場合は、労働基準法上の労働時間に該当するリスクがあります。実務上は、自己啓発としての位置づけを明確にするか、福利厚生の一環として受講機会を提供し、学習意欲を削がないなどの運用が求められます。

Q11:A1・A2試験に不合格だった場合の在留への影響は?

A: 入国時のA1相当は講習受講でも代替可能ですが、3年経過時のA2相当は特定技能1号への移行要件となります。不合格の場合でも、最長1年の在留継続(特定技能への移行準備)が認められる方針ですが、この「猶予期間」をどう活用して再試験に臨ませるかが、企業の育成能力の試金石となります。


6. 【特定技能へのステップアップ】

Q12:育成就労から特定技能1号への移行で「試験」は必須ですか?

A: はい、原則として必須です。技能実習制度では2号修了で試験免除となっていましたが、育成就労制度では、客観的な能力評価を重視し、技能試験(3級相当)と日本語試験(A2相当)の合格が要件となります。これにより、特定技能外国人の質的担保が図られます。

Q13:育成就労を3年満了せずに特定技能へ移行できるケースは?

A: 一定期間(例:1~2年)の就労を終え、かつ早期に特定技能1号の試験に合格したエリート層については、3年を待たずに特定技能1号へ移行することを認める方針です。これは、能力の高い人材を早期に処遇改善(昇給等)し、日本に留めるためのインセンティブです。


7. 【既存技能実習生への対応】

Q14:新制度施行後、旧技能実習生と新育成就労外国人が混在する際の注意点は?

A: 令和9年4月1日時点で在留している技能実習生は、そのまま技能実習計画に基づき就労可能です。ただし、人数枠の計算では、旧実習生も育成就労の枠を消費するため、新規の受入れ計画を立てる際は、旧制度組の残存期間と人数を正確に把握しておく必要があります。

Q15:技能実習3号(優良枠)は完全に廃止されるのですか?

A: 育成就労制度自体に「1~3号」の区分はありません。ただし経過措置として、施行日に2号で1年以上実習を行っている者に限り、3号(4~5年目)への移行が認められます。その後は、育成就労(3年)から特定技能へと一本化されます。


行政書士からの総括

 育成就労制度は、外国人を「安価な労働力」としてではなく「投資対象のプロフェッショナル」として扱うことを求めています。コンプライアンスの遵守はもちろんのこと、転籍リスクを見据えた「エンゲージメント(企業と従業員の絆)の構築」が、今後の外国人雇用の勝敗を分けるでしょう。

【まずは無料相談からお気軽にご連絡ください】

当事務所では、急ぎの案件にもできる限り即日対応いたします。
「まだ依頼するか決めていない」「まずは話だけ聞きたい」という段階でも問題ありません。

はじめての方でも安心してスタートできるよう、無料相談をご用意しています。
状況を丁寧にお伺いしたうえで、手続きの流れ・必要書類・費用の目安まで分かりやすくご説明します。

無理な勧誘は一切いたしません。
まずはお気軽にお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次