特定技能外国人の採用・運用ガイド:事業者が知っておくべき実務と制度のポイント
深刻な労働力不足を背景に、即戦力として期待される在留資格「特定技能」。 法務省(出入国在留管理庁)が発行している事業者向けガイドブックには、制度の根幹となる重要なルールが記されていますが、その内容は多岐にわたり、実務への落とし込みには専門的な視点が不可欠です。本コラムでは、特定技能制度の基本から、各産業分野特有の傾向、そして受入れ機関が守るべき責務まで、行政書士の視点で解説します。
1. 「特定技能」制度の目的と在留資格の構造
特定技能制度は、国内で人材を確保することが困難な「特定産業分野(12分野、2019年)」において、一定の専門性・技能を持つ外国人を受け入れるために創設されました。2024年には16分野に拡大し今後の動向が注目されています。従来の「技能実習」が国際貢献(技術移転)を目的としていたのに対し、特定技能は明確に「人手不足の解消」を目的としています。そのため、入国時から一定の技能水準と日本語能力が求められる「即戦力」としての性格が強いのが特徴です。
2. 「1号」と「2号」の決定的な違いと活用戦略
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があり、企業にとっては中長期的な人材戦略に関わる重要な違いがあります。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験(試験または技能実習修了) | 熟練した技能(管理監督者レベル) |
| 在留期間 | 通算最大5年 | 更新に制限なし(長期的雇用が可能) |
| 家族帯同 | 基本的に認められない | 認められる(配偶者・子) |
| 支援の実施 | 事業者に支援計画の実施義務あり | 支援義務なし |
事業者は、まずは1号として受け入れ、5年の間に2号へのステップアップ(試験合格等)を促すことで、将来の現場リーダーを育成するという視点が重要になります。
3. 主要な産業分野別の傾向と実務上の対策
分野ごとに管轄省庁が異なるため、特有のルールが存在します。
■ 建設業
- 傾向:他分野に比べ、国土交通省による独自の告示審査があり、非常に厳格です。
- 対策:受入れ前に「一般社団法人建設技能人材機構(JAC)」への加入や、キャリアアップシステムへの登録が必要です。給与水準も同職種の日本人と同等以上であることが厳しくチェックされます。
■ 飲食料品製造業・外食業
- 傾向:志望者が多くマッチングしやすい一方、「従事させる業務内容」の定義に注意が必要です。
- 対策:例えば外食業では、接客だけでなく調理や店舗管理も含まれますが、単一の作業(例:食器洗いのみ)を延々とさせることは認められません。実務と申請内容の整合性がポイントです。
■ 介護・農業
- 傾向:人手不足が最も深刻な分野です。介護では「介護技能評価試験」に加え「介護日本語評価試験」の合格が必要です。
- 対策:住居の確保や地域住民との交流など、生活面のサポートが定着率に直結します。特に地方での受入れでは、孤立させない支援計画が求められます。
4. 受入れ機関(事業者)に課せられる「支援」の義務
特定技能1号を受け入れる場合、事業者は「特定技能外国人支援計画」を作成し、以下の10項目の支援を行う法的義務があります。
- 事前ガイダンス(雇用条件等の説明)
- 出入国時の送迎
- 適切な住居の確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーションの実施(日本のルール、マナー等)
- 公的手続きへの同行
- 日本語学習機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等が必要になった場合)
- 定期的な面談と行政への報告
これらを実施できない場合、登録支援機関へ支援を全委託する必要があります。
5. 円滑な運用のためのアドバイスと手続きの重要性
特定技能の申請書類は膨大であり、これまで雇用後の定期報告(3ヶ月に1回)を怠ると受入れ機関としての欠格事由に該当し、以降の受入れができなくなるリスクがありました。2025年4月から特定技能制度のルールが変わり、「定期報告」の提出が年1回に変更されました。しかし、このルールの変更によって戸惑いや不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
今後は「前年度(4月〜翌3月)の状況を、翌年度の4月・5月中にまとめて報告する」形になります。
- 報告対象期間:2025年4月1日 〜 2026年3月31日
- 提出期間:2026年4月1日 〜 5月31日
重要!
すでに2025年1月〜3月分の報告(旧制度の最終分)を終えている場合、2026年4月まで定期届出の提出は不要です。現在は「報告の準備期間」となっています。
6. 報告内容の「一本化」と「簡素化」
これまでは複数の様式に分かれていた報告が、新様式(参考様式第3-6号)に一本化される予定です。1年分をまとめて報告するため、以下の情報を整理しておく必要があります。
- 受入れ状況:在籍人数、報酬の支払い実績、源泉徴収の状況。
- 活動状況:適正な業務に従事させていたか。
- 支援実施状況:事前ガイダンスや生活オリエンテーションなどの実施記録。
7. 「届出は年1回」でも「面談は3ヶ月に1回」
ここが最も間違いやすいポイントです。届出(書類の提出)は年1回になりましたが、外国人本人との「定期面談」の義務は、引き続き「3ヶ月に1回以上」のまま変更ありません。
| 項目 | 頻度 | 注意点 |
| 定期届出(入管への報告) | 年1回 | 2026年4月〜5月が初回の提出時期。 |
| 定期面談(外国人との面談) | 3ヶ月に1回 | 実施した記録を1年間分保管し、年1回の届出時にまとめて報告します。 |
8. 事業者が今から準備しておくべきこと
「年1回でいいから楽になった」と安心しすぎて、年度末に慌てて書類を作るのは危険です。1年分の「賃金台帳」や「面談記録」を後から遡って整理するのは非常に時間がかかります。
随時届出の確認:会社の住所変更や代表者変更などは、年1回の報告を待たず、14日以内に届け出る必要があります(これは変更ありません)。
データの蓄積:月々の給与明細や出勤簿を、特定技能外国人ごとにデジタル化して管理しておく。
面談記録の即時作成:3ヶ月に1回の面談が終わるたびに、すぐに記録を作成・保管しておく。
法令を遵守した適正な運用を行うことが、結果として優秀な外国人材の定着につながり、貴社の事業安定に寄与します。
行政書士陶山法務オフィスにお任せください
当オフィスでは、特定技能の在留資格申請から、支援計画の作成、分野ごとのルール適合確認まで、トータルでサポートしております。
- 「自社が受入れ要件を満たしているか確認したい」
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【お問い合わせ先】
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参考資料:出入国在留管理庁「(事業者の方へ)特定技能ガイドブック」
https://www.moj.go.jp/isa/content/930006033.pdf
:出入国在留管理庁『特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類)』(2025年7月)


