飲食・外食業の2030年問題と特定技能「外食業」活用による持続可能な経営戦略
はじめに
2030年、日本の社会構造は大きな転換点を迎えます。人口の3分の1が高齢者となり、現役世代が急減する「2030年問題」は、外食業にとって「人手不足」という言葉だけでは片付けられない経営の存続を左右する課題です。
これまでのように「日本人スタッフだけで店を回す」ことや、「留学生のアルバイトで不足を補う」という手法は限界を迎えつつあります。本コラムでは、現実的な解決策として、在留資格「特定技能」を軸とした経営戦略を、実務家の視点で詳しく解説します。
目次
- 飲食業における「2030年問題」の正体
- 「特定技能」を主戦力に据えるべき3つの理由
- 持続可能な経営のための「商品・現場戦略」
- 特定技能「外食業」採用の実務と注意点
- 行政書士による「適正な手続き」の遂行と実務サポート
- まとめ:2030年を「チャンス」に変えるために
1. 飲食業における「2030年問題」の正体
1-1. 有効求人倍率2.2倍が示す、採用市場の深刻度
農林水産省の調査によると、外食・飲食業の有効求人倍率は2.2倍に達しており、全産業平均の約2倍という極めて高い水準です。これは、募集を出しても半数以上の求人が空振りに終わっていることを意味します。2030年に向けて生産年齢人口がさらに数百万単位で減少することを考えれば、採用コストを投じるだけでは人は集まらない時代に突入しています。
1-2. 省力化の限界と「人の価値」の再認識
他産業ではロボットやAIによる機械化が進んでいますが、飲食業の本質は「手作り感」や「ホスピタリティ」にあります。配膳ロボットなどの導入は進んでも、調理の微調整やお客様への細やかな目配りなど、機械では代替できない業務が数多く残ります。だからこそ、質の高い「人」をいかに安定的に確保するかが、2030年以降の店舗の価値を決定づけます。
2. 「特定技能」を主戦力に据えるべき3つの理由
2-1. 留学生(週28時間)の壁を突破するフルタイム雇用
これまで多くの現場を支えてきた留学生は、法的に「週28時間以内」という労働制限があります。繁忙期にシフトを増やしたくても増やせない、あるいは「不法就労助長罪」のリスクを常に抱える経営者も少なくありませんでした。 特定技能は、日本人と同様のフルタイム雇用(残業等も可能)を前提とした資格です。シフトの核を担うスタッフを確保できることは、経営の安定感を劇的に高めます。
2-2. 試験合格済みの「即戦力」という安心感
特定技能外国人は、外食業独自の技能試験と日本語試験をクリアしています。衛生管理や調理、接客の基礎をすでに学んでいるため、一から教育するコストを大幅に削減できます。また、外食業の特定技能は外国人からも非常に人気が高く、意欲の高い人材が市場に集まっています。
2-3. 将来の店長候補「特定技能2号」への道
特定技能1号は通算5年の在留期限がありますが、その間に実務経験を積み、指導的な役割を担えるようになれば「特定技能2号」への移行が可能です。 2号は在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も認められます。これは、外国人が日本に根を下ろし、貴店の店長補佐やマネージャーとして、10年、20年と活躍し続けられる道が開かれていることを意味します。
3. 持続可能な経営のための「商品・現場戦略」
3-1. 原価率だけでなく「オペレーション原価」でメニューを見る
2030年問題を見据えたメニュー開発では、食材原価(Food Cost)だけでなく、「その料理を作るのにどれだけの手間(人件費・時間)がかかるか」というオペレーション原価の視点が不可欠です。 たとえ原価率が低くても、熟練の職人でなければ作れない、あるいは仕込みに膨大な時間がかかるメニューは、人手不足の時代にはリスクとなります。特定技能スタッフや未経験者でも、一定のクオリティを維持できる仕組み(マニュアル化やIoT機器の活用)への投資が必要です。
3-2. 二毛作・三毛作メニューによる生産性の向上
限られたスタッフで利益を最大化するには、仕込みの効率化が重要です。一つのベース食材を、ランチの丼、ディナーの一品料理、さらにテイクアウト用のお弁当へと展開する「二毛作・三毛作」の設計は、廃棄ロスの削減と作業効率の向上に直結します。こうした戦略的な現場運営に、長期就労が可能な特定技能人材を充てることで、現場の習熟度はさらに高まります。
4. 特定技能「外食業」採用の実務と注意点
4-1. 従事可能な業務範囲と「ジョブローテーション」の重要性
特定技能「外食業」では、調理、接客、店舗管理のすべてに従事可能です。 ここで注意すべきは、「洗い場だけ」「掃除だけ」といった単純作業に固定してはいけないという点です。日本人スタッフと同様に、幅広い業務を経験させる(ジョブローテーション)ことが、本人の意欲向上と制度の適切な運用につながります。
4-2. 技能試験(OTAFF)と日本語能力水準の詳細
雇用には、以下の合格が必須です。
- 外食業特定技能1号技能測定試験:一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が実施。衛生管理、調理、接客の3科目。
- 日本語能力試験(N4以上)またはJFT-Basic:基本的なコミュニケーションが取れる水準。
4-3. 食品産業特定技能協議会への加入手続き
特定技能外国人を雇用する企業は、農林水産省が設置する「食品産業特定技能協議会」への加入が義務付けられています。現在は、在留資格の申請前に加入証明書が必要となっており、審査には1〜2ヶ月かかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。
5. 行政書士による「適正な手続き」の遂行と実務サポート
5-1. 入管法への適合と「不許可リスク」の回避
特定技能の申請において、行政書士が担う最も重要な役割は、「入管法が定める基準に、貴店の雇用条件や体制が正しく適合しているか」を精査し、書面で立証することです。
例えば、特定技能外国人に支払う報酬が「日本人と同等以上」であることを証明する比較表の作成や、従事する職務内容が入管法の認める範囲内であることの説明など、在留資格の許可・更新を左右する法的整合性のチェックを行います。これらを適正に行うことは、意図せぬ法令違反(不法就労助長罪など)を未然に防ぎ、貴店の社会的信用を守ることに直結します。
また、外国人雇用には、入管法だけでなく他の法律遵守も厳格に求められます。不適切な雇用契約や支援の不履行は、在留資格の取り消しだけでなく、企業の名前が公表されるなど、経営に致命的なダメージを与えかねません。 法務の専門家である行政書士が介在することで、法令違反のリスクを未然に防ぎ、外国人スタッフからも「安心して働ける店」として信頼される基盤を作ります。
5-2. 煩雑な行政手続きの正確な代行
特定技能の申請手続きは、入管庁への申請のみならず、農林水産省の「食品産業特定技能協議会」への加入手続き、さらには定期的な各種届出など、極めて多岐にわたります。
- 協議会加入の手続き:申請前に行わなければならない加入審査の管理
- 膨大な立証資料の整理:企業の決算情報から、外国人本人の技能証明まで多用な書類の整合性確認
- 期限管理の徹底:ビザの更新時期や定期届出のスケジューリング
これらの事務作業を、入管業務の専門家である行政書士が引き受けることで、オーナー様は「リピート客を増やすためのファン化戦略」や「スタッフの教育」といった、経営者本来の役割に専念できる環境が整います。
5-3.よくある質問Q&A
Q1. 個人経営の小さな店でも雇用できますか? A. はい。法人・個人問わず、飲食店であれば雇用可能です。ただし、過去に労働法令の違反がないことなどの基準を満たす必要があります。
Q2. 留学生のアルバイトを「特定技能」に切り替えられますか? A. 可能です。本人が必要な試験に合格していれば、週28時間の制限がない「主戦力」として改めて雇用契約を結ぶことができます。
Q3. どんな仕事を任せられますか? A. 調理、接客、仕入れ、店舗管理など、飲食店実務全般です。日本人スタッフと同様の役割を担ってもらうことができます。
Q4. 採用から入社まで、どのくらいかかりますか? A. 内定後、およそ3.5ヶ月〜4ヶ月程度が目安です。協議会への加入審査など、前段階の準備に時間がかかるため、早めの着手が肝心です。
Q5. 「登録支援機関」への委託は必要ですか? A. 自社に外国人雇用の実績や専任担当者がいない場合は、支援を外部(登録支援機関)へ委託することが一般的です。当事務所では貴店の状況に合わせた最適なプランを助言いたします。
6.まとめ:2030年を「チャンス」に変えるために
2030年問題は、これまでの経営のあり方を問い直す警告です。しかし、早くから特定技能制度を正しく理解し、外国人スタッフを「大切なパートナー」として組織に組み込んだ店にとっては、厳しい市場環境の中でも強みを持つチャンスとなります。
大きな変革は、最初の一歩から始まります。特定技能という仕組みを正しく使い、10年後も地域に愛される店であり続けるために。当オフィスは、実務の正確な遂行を通じて、貴店の安定した一歩を誠実にサポートいたします。特定技能申請に関するご相談は、お気軽にお寄せください。
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