「ビルクリーニング」で外国人材と共に歩むために。 ~制度の基本から、現場の笑顔を守る定着のポイントまで~
日々のビルメンテナンス業務を通じて街の清潔と安心を支えていらっしゃる事業者様にとって、現在、多くの現場で「人手不足」が切実な悩みとなっていることとお察しいたします。その解決の一手として「外国人材の活用」を検討されている方も多いのではないでしょうか。しかし、新しい制度には不安や疑問もつきものです。
本コラムでは、特定技能「ビルクリーニング」制度について、単なるルールの解説に留まらず、どうすれば外国人材が貴社の「大切な戦力」として長く活躍してくれるのか、その道筋をひも解いていきます。
目次
- いま、ビルクリーニング業界で起きている変化と期待
- 「特定技能」でできること・任せられること
- 1号:現場の即戦力として活躍してもらうために
- 2号:将来のリーダー・マネージャー候補を育てる
- 在留資格を得るための「2つのルート」と日本語の壁
- 安心・安全な受け入れのために。事業者が整えておきたい準備
- 「選ばれる職場」になるために。定着を左右する心のサポート
- 【実務のポイント】行政書士がお伝えしたい、制度運用の「転ばぬ先の杖」
1. いま、ビルクリーニング業界で起きている変化と期待
私たちの生活に欠かせないビルクリーニングの現場では、今後5年間で約9万人の人手が不足すると予測されています。国はこの状況を支えるため、特定技能制度を通じて最大3万7千人の受け入れを計画していました。
現在は社会情勢の変化もあり、令和5年度末までは受入上限を2万人とする調整が行われていますが、これは決して門戸が狭まったわけではありません。むしろ、一つひとつの事業所様がしっかりと準備を行い、質の高い雇用を継続していくための「地固め」の時期とも言えます。
早めに準備を整えることは、将来的な人手不足のリスクを回避し、競合他社に先んじて優秀な人材を確保することに繋がります。
2. 「特定技能」でできること・任せられること
「特定技能」という資格は、これまでの「実習」とは異なり、最初から一定のスキルを持った「働き手」としてお迎えする制度です。
● 特定技能1号:現場の即戦力
1号の方は、オフィスビルや商業施設、ホテルなどの清掃のプロとして活躍します。
- 主な業務: 床の掃き拭き、トイレ清掃、客室のベッドメイクなど。
- 関連業務: 病院のベッドメイクや、清掃に付随する備品の補充なども可能です。「清掃のついでに行う付随的な作業」であれば、幅広く現場を支えてもらえます。
● 特定技能2号:現場を束ねるリーダー
2023年からビルクリーニング分野でも本格的に「2号」への道が開かれました。これは、現場作業だけでなく、後輩の指導やシフト管理、清掃計画の作成といった「マネジメント」を任せられる資格です。
家族を日本に呼ぶことも可能になるため、外国人材にとっても「この会社で一生働きたい」と思える大きな目標となります。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
| 役割 | 即戦力としての現場作業 | 熟練技能を持つ現場責任者 |
| 在留期間 | 通算最大5年 | 制限なし(更新により長期雇用可) |
| 家族の帯同 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
| 主な要件 | 試験合格または技能実習修了 | 1級相当の試験合格 + 2年以上の実務経験 |
3. 在留資格を得るための「2つのルート」と日本語の壁
外国人の方がこの資格を得るには、主に以下の2つの道があります。
- 試験合格ルート: 技能試験と日本語試験(N4以上)の両方に合格した方。
- 技能実習からの移行ルート: ビルクリーニングの技能実習(2号)を良好に修了した方。この場合、試験は免除されます。
ここで大切なのは、彼らが「基本的な日本語(N4レベル)」を理解しているという点です。これは、日常会話がある程度でき、現場の安全指示を理解できる水準です。過度に言葉の壁を恐れる必要はありませんが、最初は優しい日本語で接してあげることが、彼らの安心感に繋がります。
4. 安心・安全な受け入れのために。事業者が整えておきたい準備
外国人材を「直接雇用」で迎え入れる際、事業所様にはいくつか確認していただきたい法的なポイントがあります。これらは、彼らの権利を守ると同時に、貴社が不測のトラブルに巻き込まれないための「守り」でもあります。
- 「建築物衛生法」の登録: 自社の事業所が都道府県知事から「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていることが必須条件となります。
- 「協議会」への加入: 受け入れから4ヶ月以内に、厚生労働省が設置する協議会への加入が必要です。これは業界全体で適正な雇用を守るためのネットワークです。
- 適正な労働条件: 「日本人と同等以上の給与」を支払うことが定められています。彼らの技能を正当に評価し、意欲を高める賃金体系を整えましょう。
5. 「選ばれる職場」になるために。定着を左右する心のサポート
せっかくお迎えした人材がすぐに辞めてしまう……。そんな事態を防ぐには、物理的な環境整備と同じくらい「心のサポート」が重要です。
- キャリアの階段を見せる: 「2号を目指して、長く一緒に働いてほしい」というメッセージを伝えましょう。資格取得をサポートする姿勢は、彼らにとって何よりの励みになります。
- 孤立させない工夫: 留学生から変更する場合、学校を卒業して社会人になる不安を抱えています。また、技能実習からの移行者も、新しい環境には緊張します。一時帰国の希望に柔軟に対応したり、地域のゴミ出しルールを教えたりといった小さな配慮が、深い信頼関係を築きます。
- ルールの遵守: 特に留学生から変更する際、過去のアルバイト時間が「週28時間」を守られていたか、卒業証明書があるかなど、事前のチェックを丁寧に行うことが、スムーズな就労への近道です。
6. 【実務のポイント】行政書士がお伝えしたい、制度運用の「転ばぬ先の杖」
最後に、行政書士の視点から、事業者様が特に意識していただきたいポイントをまとめました。
① 業務範囲の「専有部分」に注意
マンションの「共用部分」や「オフィス」の清掃は可能ですが、個人の住居内部(キッチンやリビングなど)の清掃に特化させることは、今の制度では認められていません。現場の差配には注意が必要です。
② 2号を見据えた「実務経験」の記録
将来2号を目指すなら、「複数の作業員を指導しながら現場を管理した経験」が2年以上必要です。いつ、どのような立場で何人を指導したか、社内で記録を残しておくことをお勧めします。これが将来、彼らの永住や長期定着を支える貴重な証明書になります。
③ 留学生採用時の「資格外活動」確認
優秀な留学生を特定技能として採用する場合、過去のオーバーワーク(週28時間を超える勤務)がないかを確認することは必須です。入管の審査は非常に厳格です。「知らなかった」では済まされないケースもあるため、採用決定前に必ず確認しましょう。
④ 手続きの煩雑さは「投資」と考える
確かに、特定技能の申請書類は多岐にわたり、協議会への報告など、事後の事務作業も少なくありません。しかし、これらはすべて「適正な雇用」の証です。自社で全てを行うのが負担な場合は、専門家を活用することで、経営者様は現場の教育や事業の拡大に集中することができます。
外国人材の受け入れは、単なる不足を埋める手段ではなく、組織に新しい風を吹き込み、共に成長していく素晴らしいチャンスです。彼らが現場で「ここで働けてよかった」と笑顔で語る未来を、つくっていきませんか。
最初の一歩を、一緒に踏み出しましょう。
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